独立開業のこと

税理士が保険で稼ぐのは邪道なのか?|”代理店登録”と”税理士提携”について考える

『保険と税』。双方に密接な関わりがあることは「保険」「税」のどちらかに携わっていれば、言わずもがなではあると思いますが、税理士が保険で稼ぐって邪道なのでしょうか?そもそもどんな仕組みなのでしょうか?考えてみたいと思います。

私は保険会社勤務です。

代理店の人から旦那の職業を聞かれ”税理士”だと答えると、紹介してくれ!と言われるのがお決まりの流れです。

\士業・管理部門 特化型エージェント3選/

おすすめの特化型エージェント

税理士(税理士事務所)が保険で”稼ぐ”とは?

はじめに、税理士が保険で”稼ぐ”とはどういう仕組みになっているのかを考えます。

税理士が保険で”稼ぐ”には、2パターンあります。

  1. 会計(税理士)事務所が代理店登録し、保険を販売する
  2. 保険会社や保険代理店と”提携”し、顧客を紹介する

1つずつ見ていきましょう。

①会計(税理士)事務所が代理店登録し、保険を販売する

『会計(税理士)事務所が代理店登録し、保険を販売する』方法です。

保険を販売するには『①保険代理店として登録』し『②生命保険募集人として資格登録する』必要があります。

生命保険募集人資格は「一般過程・専門課程・応用過程・生命保険大学課程・変額保険販売資格・外貨建保険販売資格」などいくつか種類があります。(どれも簡単です)

資格試験に合格し、生命保険募集人登録が必要です。

代理店登録し保険を販売すると、保険会社から手数料が支払われます。

保険会社や保険商品・代理店としての手数料ランク”によって手数料率は様々で、契約された『年間保険料×”数%~100%超え”』の手数料が支払われます。(保険会社によっては、年間保険料ではなく保険金額によって手数料が決まる場合もあります)

例えば、A保険会社の定期保険を販売すると、手数料が『年間保険料×50%』貰えるとします。『死亡保険金額1億円、年間保険料が300万円』だとします。

・300万円×50%=150万円

150万円が、代理店登録してある税理士事務所に支払われることになります。

税理士事務所が保険代理店として登録販売を行うため、販売手数料収入がダイレクトに支払われます。

税理士自らが募集人登録し商品提案・販売を行うこともできますが、保険会社の担当者が準備~同行サポートしてくれるパターンがほとんどです。

見た目上は『税理士が保険販売した』ように見えますが、実際は保険会社担当者に案件を紹介し、『保険会社担当者が商品提案~契約までおこなう』イメージです。

ちなみに代理店登録すると、代理店としてしっかり運用マニュアルなどを作成しているかなど、保険会社から定期点検(代理店点検)されます。監査が入ることもあります。

複数の保険会社の商品を取り扱いたい場合は、それぞれの保険会社とのやり取りが必要になります。それぞれの商品の仕組みもある程度理解が必要ですし保険会社のシステム導入も必要です。

また、年間どれだけの保険を販売するかによって『手数料ランク』も変わります。一定件数を販売しないと、一般的には手数料水準が低くなります。

販売後の保険に関するアフターフォローも税理士(税理士事務所)がおこないます。

手数料がダイレクトに入ってくるため”稼ぎやすい”反面、”管理などが大変・業務が増える”ことがデメリットです

はっきり言って大変です。面倒です。

②保険代理店と”提携”し、顧客を紹介する

もう1つは『保険代理店と”提携”し、顧客を紹介する』方法です。

『保険代理店と”提携”し”顧客を紹介”、その顧客が保険を契約すれば”手数料の一部を受け取れる”。』という仕組みです。

この場合は、税理士事務所は代理店登録しませんし、税理士が生命保険募集人資格を取得する必要もありません。

保険商品ごとの違いや細かい知識も代理店が勉強していますし、提案~契約まで代理店募集人がすべて行います。(税理士は提案の場に同行したりしなかったり…)

アフターフォローも代理店がおこないます。

保険って想像以上にアフターフォローが多いんです。

「保全」と言われるものですが、契約者情報の変更や保険金等の支払い、この商品どんなんだっけ?に答えたり、保険料が未納の場合の連絡など、多岐にわたります。

「契約後はすべて保険会社と直接やり取りしてください」ということももちろん可能なのですが、保険代理店はしっかりアフターフォローもしてくれるところが多いため、途中解約も低くなります。

といったように、大変(面倒)な業務はすべて保険代理店がおこなってくれます。その代わりに、保険販売の手数料は保険代理店が多く受け取ることになります。

保険会社から支払われる手数料の3割くらいが税理士に支払われるイメージです。(残りの7割は、保険代理店が受け取ります)

例えば、A保険会社の定期保険を販売すると、手数料が『年間保険料×50%』貰えるとします。税理士に支払われるのは、そのうち3割だとします。

『死亡保険金額1億円、年間保険料が300万円』だとします。

・300万円×50%=150万円

45万円が税理士に、残り105万円が代理店に支払われます。

”顧客を紹介するだけなので業務が増えることはない”かわりに、受け取れる販売手数料も少なくなります。

\リクナビネクストに登録/

\dodaに登録/

保険会社や代理店は”代理店登録”や”税理士提携”してほしい

保険会社や保険代理店は、会計(税理士)事務所に”代理店登録・税理士提携”してほしいと考えています。

それには以下のような理由が考えられます。

  • 税理士の後押しがあると、お客さんも保険加入しやすい(特に法人)
  • 税理士から保険を勧められると説得力が増す
  • ”税”のことを税理士に聞ける・任せられる
  • 単価の大きな契約が多い(相続や法人契約など)
  • ニーズを見つけやすい(相続税対策や法人案件など)
  • 税理士を探しているお客さんを、逆に紹介することもできる

保険会社や代理店にとってはメリットばかりです。デメリットはなんでしょう…思いつきません…。

お客さんに保険を提案販売するだけでなく、逆に『税理士を探している・必要としているお客さん』に、税理士を紹介することもできますしね。

実際に私も保険会社で勤務していると、”税理士提携”にチカラを入れている保険代理店に多く出会いますし、どんどん増えてきています。

法人や富裕層のお客さんが『保険加入を検討しているけど、顧問税理士に反対されているから加入できない』といって加入を断られるケースもよくあります。顧問税理士が保険に対して前向きであれば、そういったこともありません。

\自分でホームページを作成する/

✔ 独自ドメインの取得なら1円〜の【お名前.com】

✔ レンタルサーバーなら【ロリポップ

税理士(税理士事務所)のメリットは?

では、税理士(税理士事務所)サイドとしてはどうなのでしょう?

メリット①:稼げる

手数料収入で稼げます。

特に相続案件や法人契約は単価も高く、1件決まるだけで〇十万・〇百万・〇千万の手数料収入が入ってくることも期待できます。

保険会社や保険商品によっては5年~10年にわたって継続手数料も支払われます。初年度が最も多いですが、保険契約を続けていれば継続して収入が入ってきます。

お客さんが早期解約してしまうと、受け取った手数料を保険会社に返さなければなりません。

『戻入(れいにゅう)』と呼ばれるもので、だいたい2~3年間は戻入期間があります。

メリット②:顧問先への付加価値提供

保険に携わっていない税理士(税理士事務所)との差別化をはかれます。

お客さんによっては本当に保険が必要な場面も多くあります。事業保障や退職金準備、病気への備えや就業不能への備え、資金繰り悪化への備えや福利厚生のため、相続対策など…

通常の業務をおこなっていると、保険に加入したほうが良いかもしれない。と感じることがある場面もあると思います。そんなとき、実際に保険を提案できるのか?保険を提案できる人を紹介できるのか?そこに付加価値があると思います。

メリット③:保険や周辺知識(スキル)の向上

知識はどれだけあっても邪魔になることはありません。具体的な保険商品を知ることも「お金の専門家」として、知るにこしたことはありません。

保険に関わる税制は変化が目まぐるしく、特に高齢税理士は保険を嫌っている印象があります。

しかし保険商品や周辺知識をもつことによって『保険のスキームを使った提案』ができたりと、業務の幅も広がります。

勤務税理士の場合は特に「保険周辺の知識やスキル」を身に付けておいて損はないでしょう。独立開業後に役に立つかもしれません。

メリット④:逆にお客さんを紹介してもらえることもある

保険会社や保険代理店のお客さんの中には、法人や個人事業主で『税理士を探している』『今の税理士に不満がある』人もいます。

また個人のお客さんの中にも『相続税について相談をしたい』『贈与について相談をしたい』『不動産売買の税金』について相談したい人もいます。

そういったお客さんを紹介してもらえる可能性もあり、仕事を得るチャンスが増えます。

\士業・管理部門 特化型エージェント3選/

おすすめの特化型エージェント

『本業に集中できない』『本業を見失う』問題

ここで必ず反論されるあるある意見が『本業に集中できない』『本業を見失う』のではないか問題です。

もちろん「保険を売ることが本業ではない」ですし「保険を売るために税理士になったのではない」と思いますので、その意見はもっともです。

あくまで『本業を遂行しているなかで、保険を提案すべき機会があった!』時に『保険』が登場する。というレベル感がちょうど良いと思います。

「保険料収入を売上の柱にしよう」とか「一発稼いでやろう」とか、銭ゲバになってはいけません。

『お客さんにとってどうなのか』が大切

ここまで語ってきましたが、『保険会社・代理店・税理士にとって”代理店登録・税理士提携”がどうであるか』ではなく、結局は『お客さんにとってどうなのか』が大切です。

『保険の手数料収入が税理士に入る』みたいなこっち側の理由はおいておいたとして、『保険の提案もできる税理士』か『保険の提案はできない税理士』か、どっちがお客さんにとって良いか?

『保険の提案もできる税理士』の方が絶対よくないですか???

お客さん自身も「保険に入った方が良い」と自分で気付けないこともたくさんあります。

最終的に加入を決めるのはお客さんです。提案の幅は「狭い」より「広い」方が絶対良いですよね。

つまりお客さんからすると、”代理店登録している”税理士事務所や、”税理士提携”している税理士の方が良いでしょう。

保険で稼ぐのは邪道?

なんとなく話の展開が見えてきましたが、結論にうつります。

私の主観満載の結論です♪

「保険で稼ぐのは邪道。保険キライ。税理士としての使命は…」という考えは、特に高齢税理士に多く見受けられますが、それはその税理士の意見ということで放っておきましょう。時代は変わってきています。

お客さんのためになるのであれば良い

銭ゲバになってしまうのは良くない

この2点だと思います。

お客さんのためになるのであれば、それに越したことはありません。

ただし、銭ゲバ(自分のため)になってしまうのは良くないです。

保険の手数料収入は1件決まると1000万以上得られることもあります。ついついお金に目が暮れて「保険を売ることが目的になってしまう」こともあり得ます。

お客さんのために保険を提案した結果、手数料収入を得られた。

という感じが良いでしょう。そうであれば、邪道ではありません。

と、いうのが私(保険会社勤務)の考え方です。

旦那の開業1年目の売上をまとめています。良ければご覧ください。↓

\『MS-JAPAN』に無料登録する/

\士業・管理部門 特化型エージェント3選/

おすすめの特化型エージェント

《おまけ》おすすめ書籍

私の旦那が激しく感銘を受けた”井ノ上陽一さん”の書籍です。(今やすっかり”井ノ上チルドレン”です)

独立開業を目指している方はもちろん、資格取得のため勉強中の方…、税理士業界で働くすべての方におすすめです。(特に現在の税理士業界に違和感を持っている方…ぜひ読んでください)

「にほんブログ村」ランキングに参加しています。ポチっと押して応援頂けると嬉しいです!

にほんブログ村 士業ブログ 税理士へ
にほんブログ村